西麻布の物件が十五億円で売れるとは思えない

2011.11.11

弁護士は、すでに相談を受けた時点で、「これは破産だな」と見抜いていたはずである。どう考えても西麻布の物件が十五億円で売れるなどという根拠はない。自分が莫大な報酬を得るために、話を複雑にしただけのことである。わたしは、その弁護士に憤りを感じた。わたしは永田町に事務所をかまえているその弁護士に会った。「個人破産したほうがご本人たちのためだということが、あなたは最初からわかっていたはずだ。仮に破産しないとしても、銀行との話し合いで、資産を全部処分して、残った借金を一般債権にして、奥さんと娘さん、それにご主人の生活を守っていく道を提案してあげるべきだったでしょう」そう言うと、弁護士は、「いや、法律家の立場としては……」と、くどくどしゃべりだした。

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その内容は、素人が聞けばいちいちもっともである。わたしがさらに追求すると、弁護士は下を向いて、「そう思われるのであれば、ご縁はここまでですね。なんといってもこの仕事では信頼関係がいちばんですから、わたしをそのように信用していただけないのであれば、仕方がありません」と言った。わたしは、もうそれ以上話してもしょうがないと思ったので、引き上げることにした。これは、法律の問題ではない。たしかに法律上は、彼にはなんの非もないだろう。弁護士だから、その点はぬかりなくやっている。しかし、道徳上はどうだろうか。銀行の口車に乗って、みすみす膨大な資産を失いつつある資産家の未亡人と娘さんの弱みにつけこんで、その弁護士は一億円をかすめ取ったのである。許しがたい行為である。





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